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Blog Detail歯周病でもインプラント治療は大丈夫?最新研究が示す長期成績 〜ドイツ・ミュンスター大学 18 年間のデータから〜
歯周病で歯を失ったけれど、インプラント治療はできるのだろうか??
「歯周病で歯を失ったけれど、インプラント治療はできるのだろうか」 当院にもそんなご質問をよくいただきます。
今回は、2026年に Clinical Oral Implants Research 誌に発表された研究(Kashta らのグループ)の内容を、患者さんの目線でも整理してお伝えします。
この研究の規模
ミュンスター大学の歯周病科では、2005年から2022年までに、歯周病の患者さま362名 にのべ 1,106本のインプラント を入れて経過をみてきました。
- 平均年齢:63.5歳(33〜90歳)
- 女性:50.3% / 男性:49.7%
- 糖尿病のあるかた:10.5%
- 喫煙歴のあるかた:11.6%
- フォローアップ期間の中央値:85.5か月(約7年強、最長で20年弱)
すべてのインプラントは、同じ経験豊富な歯周病専門医が1人で埋入 しています(ミュンスター大学の B. Ehmke 教授)。術者の違いが結果にまぎれ込まないよう、条件をできるかぎり揃えた研究です。
結論①:歯周病のかたでも、インプラントは十分に長くもちます
埋めた1,106本のうち、最終的に抜けてしまった本数は 85本(7.69%)。
| 経過年数 | 残っている割合 |
|---|---|
| 5年(60か月) | 95.5% |
| 10年(120か月) | 91.1% |
| 15年(180か月) | 82.6% |
5年で約20本に1本、10年で約10本に1本、15年で約5本に1本が抜けるという数字です。「歯周病だからインプラントは危ない」と一概には言えない、これが18年間の積み上げデータから見える事実です。
結論②:ただし、最初の6か月が要注意〜早期脱落の約半分はこの期間に集中
85本の脱落のうち、38本(3.44%)は埋めてから6か月以内に抜けていました。つまり、脱落全体の約44.7%が最初の半年で起きている ことになります。
これは「osseointegration(骨との結合)」がうまくいかなかったケースがほとんどで、術後の感染や患者さまの体質が影響すると考えられています。
したがって、当院でも:
- 埋入後の6か月はとくに丁寧なチェック を重ねる
- 腫れ・痛み・動揺などの初期サインを見逃さない
- 気になる症状があれば早期にご相談いただく
この3つを患者さんと一緒に大切にしています。
結論③:「進行スピード」が将来の運命を分ける〜Grade C は要注意
この研究でもっとも重要な発見はここです。
歯周病には重症度の指標が2つあります。
- Stage(ステージ):これまで破壊された組織の範囲・重症度
- Grade(グレード):破壊の 進み方・速さ と全身リスク(糖尿病・喫煙など)
論文ではこの2つを別々に分析したところ、Stage(3〜4)は HR 1.67 で p=0.37(統計的に有意差なし)、Grade C では HR 2.78(95%CI 1.18〜6.54, p=0.02) と、進行の速さを示す Grade のほうが強い予測因子 であることがわかりました。
つまり、「今ある破壊の量」よりも「これからどう進むか」のほうが、インプラントの寿命に関係する ということです。これは当院の日常診療にも直結する気づきです。
結論④:それでも「歯科インプラントは信頼できる治療」
最後に強調したいのは、論文の結論です。
「重度の歯周病患者さんでも、適切な歯周病治療を受けたうえでインプラントを入れる限り、歯科インプラントは信頼でき、予見可能な治療選択肢である」
つまり、いま歯を失って困っていて歯周病の治療履歴があるかたでも、条件を整えればインプラントは十分に現実的な選択肢 だということです。
当院での活かし方
当院では、この研究結果をふまえて、以下を、これからの患者さんとの治療計画の軸にしていきたいと考えています。
- 初診時に Stage と Grade を必ず記録・共有 します(特に Grade C かどうかはリスク説明の分かれ目です)
- **インプラント埋入前に、徹底した歯周病治療(感染除去と手術)**を先行させます
- 埋入後6か月はとくに密な観察期間 と位置づけ、Supportive care(メインテナンス)を継続します
- Grade C と判定されたかたには、禁煙・糖尿病コントロール・口腔衛生の同時介入 を提案します
「歯周病だから無理」とあきらめる前に、まずは現在の歯周の状態を正確に診断し、何が可能かを一緒に考えましょう。
参考文献 Kashta A, Baumeister SE, Ehmke B, Reckelkamm SL. Long-Term Implant Survival in Periodontitis. Clin Oral Implants Res. 2026; 37:623–629. DOI: 10.1111/clr.70105(Open Access, CC BY 4.0)




